第六感ヘルツ

34,メランコリックメランコリー




「何だかなあ……」


プリンを頬張りつつ、何度目か知れない溜め息をついた。
刺激が欲しい、ささやかな幸福とかではなくて、それこそ、物凄くときめく様な。


「……い、おい!」


彼の憤慨した声が、背後からする。


「あ、起きたの?」


やる気もなく一瞥くれて、またプリンを頬張る。
この男も飽きたなあ……そんなことを考えながら、最後のひとくちを飲み込んだ。
ぎしぎしとスプリングを不愉快に鳴らす彼に、また溜め息が出る。


「うるさいよ、もう」
「ならいい加減、俺を放してくれ!」


ベッドに四肢をネクタイで縛りつけられた彼が、それこそ、食い入る様にあたしを見詰めた。


「……わかったよ、もう」


それだけを応えれば、酷く安心した彼の顔が、部屋を出る際、あたしの視界を掠った。
あの男は飽きた、うるさくて仕方ない。


「……殺っちゃうか」


キッチンでナイフを探しながら、プリンはまだあっただろうかと冷蔵庫の中身を思い出していた。

そうして終わらない、憂うつな憂鬱。



34,メランコリックメランコリー
【エンド】
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