第六感ヘルツ

39,溶けていく




暑いなあと見上げた窓枠からは、蝉の声ばかりが響いていた。
ついでに開けた窓からは、むわんとした熱気しか入ってこない。


「暑いな……」


呟いて手元を見たなら、持ったアイスは溶けていた。
どうせ溶けてしまうなら、アイスクリームでなくラクトアイスにすればよかったと、どうでもいいことを考えてみる。
どろどろどろどろ、アイスは溶けていく。
どろどろどろどろ、わたしの手元まで溶けていく。
べたべたする、気持ちが悪い。
どろどろどろどろ、どろどろどろどろ、


「べたべたするなあ、もう」


立ち上がるのも面倒で、そこに舌を這わせた。


「あ、」


ざらっとした感触にまた手元を見たなら、舐めた手元が、ずるっと、溶けたように抉れていた。


「……暑いからなあ」


今日は真夏日、どうやら、わたしごと溶けてしまうようだ。



39,溶けていく【エンド】
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