第六感ヘルツ
46,水曜日の僕へ、
ああ、今日はいい天気だ。
今日は何曜日だろうか。
カレンダーを覗き込めば、どうやら今日は水曜日。
生ゴミの日でも、リサイクル回収の日でもない。
何となく中弛みする、そんな曜日。
いつものYシャツに袖を通し、いつものよれたスーツを着る。
今日のやることはわかっていた。
知っていた。
この方が、きっと正しいと思う。
生臭い地下鉄に乗って、ぎゅうぎゅうとすし詰めになる一員と化して、中途半端な都会の片隅で、少し廃れたビルの一室に向かう。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
いつもと同じ挨拶に、いつもと同じ顔ぶれ。
嫌になるけど、まあ、仕方ない。
「スーツよれてるぞ」
「……まあね」
これもまた、いつものこと。
嫌になるけど、やっぱり仕方ない。
もう諦めた僕は、デスクに座ってパソコンの電源を入れる。
やることはわかっている。
目の前に散らばった書類をいつも通り片付ければいいだけ。
はあ と吐いても無駄な溜め息が、何とも情けなく書類を揺らした。
「……いつまで水曜日なんだろ」
いつだったか。
いつからか、寝ても覚めても同じ日だった。
何でこんなことになったのか何て、僕には全くわからない。
そんなこともう、どうでもよかった。
「はあ……」
いつもと同じ文面を打ち込んで、いつもと同じ会話をして、いつもと同じ時間に終わって、いつもと同じ電車で帰る。
「寝るか」
いつもと同じスウェットで寝れば、明日もまた、中弛みの水曜日。
(違うことをしたら、木曜日になるのだろうか)
46,水曜日の僕へ、【エンド】