第六感ヘルツ
47,704号室
知らなかっただけだった。
噂や都市伝説なんて興味もなかったし、ましてや霊感がある訳でもない。
ある程度金が貯まったので一人暮らしをしようと低価格で探した結果、ある不動産屋から勧められたのが、このマンションの704号室だった。
「いいとこじゃん、綺麗だし」
あの価格で購入出来るなんてどんなボロマンションかと思っていたが、想像以上に、そこは小綺麗なところだった。
ただ。
「日当たりがちょっとなあ」
北向きなのが悪いのか、小綺麗な部屋は少しだけ湿っぽい。
それなりな大きさの出窓はあるが、風通しはいまいちだった。
「それにしたって妙な部屋だな、写真と価格だけで決めちゃったけど」
後日荷物は運んでもらうことを不動産屋に手配してもらったので、取り敢えずな手荷物しかない。
一応、布団だけは無理矢理運んできたが。
縦に長い部屋の造りと北向きの出窓、7Fのど真ん中だというのに、全くしない人の気配。
微妙に肌寒く感じるのは、北向きだからだろうか。
「まあ、それ以外に理由なんてないか」
さっさと布団を敷いて、そうして迎えた、最初で最後の不変だと信じていた日常の夜。