第六感ヘルツ
3,無知な少年
あるところに緑の少年と青の少年がいました。
「お前俺にさ、そのパンくれない?」
「どうして?」
「俺んち貧乏でさ、買えねえから」
緑の少年は確かに貧乏でしたが、青の少年もまた貧乏でした。
「そうなんだ、いいよ」
青の少年は快くパンをあげました。またある日。
「お前俺にさ、その果物くれない?」
「どうして?」
「俺んち今、母さんが病気だから」
「そうなんだ」
緑の少年の母親は確かに病気でしたが、青の少年の母親もまた病気でした。
「いいよ」
青の少年は快く果物をあげました。パンから果物へ、果物から家畜へ、家畜から畑へ、次々と緑の少年に快くあげていた青の少年は、いつしかあげるものがなくなってしまいました。
「お前俺にさ、お前の体くれない?」
「どうして?」
「だってお前何もないじゃん。生きてる価値あんの」
青の少年は考えました。母親も亡くなり、食べ物も畑もお金もない。もう青の少年は、生きてはいけないのです。
「いいよ」
青の少年は笑って、緑の少年に自分をあげました。その晩、緑の少年の家では、豪華なステーキが食卓を彩ったそうです。
そんな、素直で無知な少年二人の話。
3,無知な少年【エンド】