第六感ヘルツ
4,爽やかな朝を迎える
今日も一日が始まる、変哲のないいつもの一日が。
糖分摂取過多なチョコレートマフィンに、同じくとろけるようなコーヒー。
「これはもうコーヒーって代物じゃねえな」
無駄口を叩く暇があるほどの変哲のない朝。
米派でもパン派でもいい、そんなどうでもいいことに拘りを持つような人間じゃない。
要は腹が膨れればいいだけだ。
その割りに糖分過多だが、変哲ない朝を少しだけ変えてみたいというちょっとした趣向だった。
そう、何の変哲もない朝だ。
爽やかで眩暈がしそうな、そんな朝だ。
変哲ない朝を求めている筈なのに、矛盾して趣向を凝らすような真似をする。
いつもと同じだと言い聞かせながら、現実逃避に嫌いな糖分を無駄に摂取してみる。
「……もう一杯飲むか」
立ち上がった瞬間、後ろに引いた椅子にがつっと小さな衝撃があったが、敢えてそこは気にしない。
「気にしない、気にしない気にしない気にしない気にしない気にしない気にしない気にしない気にしない気にしない気にしない気にしない気にしない気にしない、」
ああそうだ、泥酔していたから覚えてなんかいないんだ、だから、きっと俺の所為なんかじゃないんだ、きっとそうだ、こんなものないんだ、だから、気にしないでいい。
椅子にぶつかったそれが女だとか、その目が見開かれたままだとか、もう息をしていないとか、そんなことは気にしないんだ。
変哲のない朝を迎えて、どうやら快晴らしい今日は、爽やかに始まる。
口に含んだコーヒーとマフィンが、無駄に糖分を舌先に残していた。
4,爽やかな朝を迎える
【エンド】