第六感ヘルツ
6,青い指
「俺、宇宙人なんだ」
急に晴天の下言われた言葉に、思わず笑った。
宇宙人て。
どうせつまらない冗談にしても、もっと捻って欲しかった。
「何それ、ださ」
同じ笑うでもこれは嘲りに近い。
ついでに吐き出した言葉は、やっぱりそんな意味を含んでいた。
宇宙人て。
もう一度自分の中で繰り返して、鼻で笑った俺がいる。
「嘘だと思ってるんだ?」
「つまんねえ冗談だと思ってるよ」
「疑ってるんだ?」
「つまんねえんだよ」
何故か微妙に食い下がるこいつが、少しだけ気持ち悪い。
が、こいつはいつもこんなだ。
周りからはそれで嫌遠されているし、友達は俺しかいないだろう。
頭の中が電波だ。
そんなこいつを面白いと思える奴はきっと少ない。
「お前ってときどき疲れるよな」
「やっぱり嘘だと思ってる」
「そういうとこが」
ときどき、面白いを越えている。
変わらず嘲りながら、それでも一緒にいてやる俺は優しい。
それをわかっているだろうか。
わからないなら、それこそこいつは、一回死んだ方がいいかもしれない。
「いいんだ」
「あ?」
小さく小さく呟かれた言葉が、俺には聞こえなかった。
付き合いきれないと呆れていたから、届かなかったのかもしれない。
「友達だから」
今度は聞こえた言葉。
と、するりと手袋を外して掲げられた指先。
「……は、」
「俺、宇宙人なんだ」
晴天に掲げられたそれは、青く青く、晴天と同化していた。
うねうねと、どす黒くうねる何かが、まるで流れる血液のようにそこに浮き出ていて、
「君を連れていってあげようか?」
『友達だから』
そう笑ったこいつの指が、真っ直ぐに、俺を指していた。
小さく息を呑んだ俺が、笑えなかったのは言うまでもない。
6,青い指【エンド】