俺様執事に全てを奪われてⅡ
煙草の臭いと香水の移り香
午後八時

今頃、元は楽しく飲んでいるのだろうか?

わたしは、勉強している手を止めると、宙を見つめながら、元の飲んでいる姿を想像した

元は酔うとどんな風になるのだろう

酔ったところを見たことがないから、まったく想像がつかない

高校時代の友人と飲むのは、きっと楽しい時間だろうな

元も、大声で笑ったりするのだろうか?

鈴村先生も…いるんだよな

飲みの席にさ

スタイル抜群の鈴村先生を思い出すと、ついため息が零れてしまう

元とそういう関係にあった人だ

もっと他にもたくさんいたんだろうけれど、わたしの肉眼で見た女は鈴村先生だけだ

元の抱き方は知っている

だから、わたしの脳内で二人が抱き合うシーンなど容易に想像できてしまう

わたしは机の引き出しから、雑誌を取り出すと、教科書とノートの上に雑誌を広げた

読者のアンケート調査のページを開く

そこには、「妻の妊娠中に、夫が浮気をする」と大きく太字で書いてあった

妊娠して4ヶ月

元はどうなんだろうって考えてしまう

「まだ勉強してんのか…って、違うみてーだな」

背後から突然聞こえてきた声に、あたしは雑誌を勢いよく閉じると振り返った

「元?」

「なに?」

「わ…忘れもでもあったのか?」

「いや、帰ってきたんだよ」

「え? もう?」

「帰ってきたらいけないのかよ」

「違うが…だって、まだ一時間しか」

「もう一時間も過ぎた…だろ」

元はベッドに腰をかけると、上着を脱ぎ捨てて、ごろんと横になった

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