俺様執事に全てを奪われてⅡ
「元? どうしたんだ?」

元が、いきなりベッドに横になるなんて、珍しい

脱いだものを片付けもせずに寝ようとするなんて

まだ八時だぞ?

いつもなら、深夜0時すぎまでベッドで読書をしている元が、どうしたのだろうか

「乙葉…お前、俺を信じてないだろ」

元が仰向けになったままで口を開いた

「え? 何を、急に」

「そんな雑誌を神妙な面持ちで読みやがって…。飲み会イコール浮気するとは限らねえだろ」

「ち…ちがっ」

「何が違うんだよ。俺が浮気すると思ってるから、そんな雑誌を後生大事に持って、何度も読み返してるんだろ」

元がごろんと身体を回転させて、わたしに背を向けた

「別に、そんなつもりじゃあ…」

「もう寝る」

元が低い声で呟くと、布団の中に足を突っ込んだ

「なんで元が怒ってるんだっ!」

「怒るだろ」

「どうして」

わたしは、席を立つとベッドに向かった

ベッドの上で立膝になると、元の肩に手を置いた

元は「やめろ」と言わんばかりに、肩を回した

「何を怒っているんだ」

「わからねえのかよ」

「ただ、雑誌を読んでいただけだ」

「読んでいた? 違うだろ。勉強の途中で、わざわざ取り出してきて、何度も読み返しているページを眺めて、俺が浮気しているところを想像してたんだろ」

元が、振り返るとわたしに厳しい視線を送ってきた

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