俺様執事に全てを奪われてⅡ
床から、携帯の着信が聞こえてきた

「あ?」

聞きなれない音楽に、わたしはベッドから顔を出した

元が脱ぎっぱなしのまま、放置している上着に、元の携帯が入っているらしい

わたしは布団から足を出すと、元の上着を掴んで引き寄せた

胸ポケットから、携帯を取り出すと液晶を見つめた

『鈴村 夏姫』

名前を見て、びくんと身体が勝手にはねた

どうして?

なんで、電話してくるんだ?

一緒に飲んだばかりだろ?

もしかして、飲み足りないとか?

話し足りない?

元は1時間で帰ってきた

7時に出て行って、8時には戻ってきた

行き帰りの道中時間も考えれば、きっと飲んでいた時間なんて40分あるかないかってところだろう

久々に会った友人が遅れてきて、すぐに帰った

どう言って帰ってきたのかは知らないが、きっと満足はしてない

だから、電話してきたのか?

次の約束を取り付けるために?

わたしは、震える指で、通話ボタンを押した

『あ、元? もう家に着いたかしら? せっかく元の仕事場の近くで飲みをセッティングしたのに、つれないなあ。そんなに乙葉お嬢様は厳しいのかしら? 厳しそうな子よねえ。我儘お嬢様っていうか…他人の心がわからない子よねえ。他人に興味がないっていうか。だから、浮気ができるのねえ』

え? 浮気?

『ちょっと、元! 聞いてるの?』

わたしはボタンを押して、通話中から切断中へと画面を切り替えた

我儘お嬢様?

他人の心がわからない子?
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