俺様執事に全てを奪われてⅡ
元が部屋の前まで送ってくれた

『じゃ、ゆっくり休め』と元が言うと、静かに部屋のドアを閉めた

わたしはすぐに、がちゃっと部屋の鍵を回した

むかつく

元、浮気してんじゃん…とか思ったら、この部屋に入って欲しくないって思った

『ちょ…乙葉? やっぱ怒ってんじゃねえかよ! なんで鍵かけてんだよ』

ばたばたと足音を鳴らして戻ってきた元が、ドアノブを回しながらドアの向こうで怒鳴ってきた

「元と離婚する」

『はあ? 何、言ってんだよ。離婚ってなんだよ。ちょ…ドアを開けろ』

「開けるかよ。離婚するっつったら、離婚するんだよ」

『わけわかんねえこと言ってんじゃねえよ。早く開けろ』

元がゴンゴンとドアを叩いている

わたしはドアから離れると、元が怒鳴っているのも無視して、布団にもぐった

どうせ、わたしは我儘お嬢様だ

他人の心なんかわからないさ

だからって、わたしを騙す理由にはならない

しばらく部屋の前で怒鳴っていた元の声が、静かになった

「諦めたのか?」

わたしはむくっと布団から顔を出すと、怖い顔をして突っ立っている元がいた

「は? なんで?」

「俺は執事だ。屋敷中の鍵の管理くらいしている」

むすっとした表情の元が、低い声で説明をする

「離婚ってなんだ?」

「元と離婚するって言ったんだ」

「意味がわからねえなあ。俺の子を身ごもっておいて、離婚する意味がわからねえよ」

元が腕を組んで、細い目でわたしを上から見下ろしている

「元が浮気しているからだ」

元の眉がぴくっと引き攣った

「おい。誰が、浮気してるって?」

「元が…だ」

「誰と?」

「え?」

「だから、誰と浮気してんだよ」

そういえば…、鈴村先生は相手の名前まで言ってなかった
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