俺様執事に全てを奪われてⅡ
今度は元がぷいっと横を向いた

組んでいる腕をほぐすと、「ああ、もうっ」と苛立たしげに言葉を吐き出して、ソファにどかっと腰を落とした

「俺の男女関係なんて、そんなもんだ。告白されれば、拒まない。去っていく者も、追いかけない。別にそいつがどういう選択をしようが、関係ねえし興味もねえ」

「わたしのときは違った! 告白しても、『ガキに言われても何も感じねえ』とか言わなかった? わたしは元に振られたぞ」

わたしはベッドの上で、元に向かって指をさした

「ああ、振ったな。酒の勢いで、俺をベッドに引き込もうとした罰だ」

「他の女なら、確実にベッドに入ってただろ!」

「ああ、入った。ラッキーって思うだろうなあ」

「じゃあ、なんでわたしのときは違うんだ。本当に何も感じてなかったのかよ」

元の目が一段と細くなると、長い足を組んだ

「わからねえのかよ」

「わからないね」

呆れたように、元がため息をついた

いや、実際に呆れているんだろう

なんで、こいつは俺の気持ちを理解してねえんだ…くらいに思ってるんだ

だから、他人の心をわからないヤツって…鈴村先生に愚痴るんだ

「どうせ、わたしは我儘で、何も知らない女だよ! 他人の気持ちだってわからないし、浮気されてても気付けないくらいの鈍感女だっ」

「おいっ。いい加減にしろよ」

「何がだ」

「浮気はしてないって言っただろ。さっき、あんだけ乙葉としておいて、わからねえのかよ」

わたしは口をへの字に曲げると、横を向いた

「…ざけんなよ」

元の声がさらに低くなると、バンっと力任せにテーブルを叩いた

「あのなあ…俺は誰とも浮気なんてしてねえよ。する時間もねえし、したいとも思わねえ。俺は仕事に戻る。一人で寝たいなら、勝手にしろ。鍵もかけたいなら、かければいいだろ。だが離婚はしねえ。絶対にな」

元が立ち上がると、長い足を大きく開いて部屋を出て行った

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