こっちむいて伏見!
「ありがとうございましたー」
店員さんに見送られてアタシは店を出る。
今までは髪が背中まであったけど
今度は首が空いてるから、
外に出て風に当たるとすーすーしてちょっとくすぐったい。
でもいい気分転換にもなったし。
夕方、アタシは地面に映る自分の長い影を見て、
ホントに髪が短くなったんだなあって思った。
伏見は、まあ、置いといて。
マユコはなんて言うだろう?
そんなこと考えながらのんびりと歩き、
家の近くまで帰ってくると。
あれ…?
誰かが玄関のところに立ってる…?
アタシは目を凝らして近づいていく。
誰だろう。
ウチの学校の制服っぽい…?
「あ、深草」
そのひとはアタシより先に気付いて声をかけてきた。
声の主は藤森先輩だった。
立ち止まるアタシに彼の方から駆け寄ってきた。
「あ…あれ?
先輩どうしたんですか?」
「どうした…って
今日学校休んだんやろ?大丈夫?」
「大丈夫って…。
それより先輩、学校からアタシの家までって
地下鉄に乗って…?」
アタシは地下鉄で学校に通っている。
先輩はわざわざ地下鉄に乗って来てくれたんだろうか。