こっちむいて伏見!


アタシは彼の顔をちゃんと見たくて
伸び切ってる、
今がチャンスと顔を近づける。


すると伏見は慌てて姿勢を正す。


「近いって言うてるやろ!
何回、同じこと言わせるねん!」


あー、またですか。


「だって。
伏見の顔がぼやけるもん…」


「それやったらメガネかけたらええやろっ!」


「でもメガネ似合わへん…
ってこの会話ホンマいっつも会う度にしてへん?」


アタシはつい可笑しくなって笑いながら彼に聞く。


「あ?…そう…かも」


そして彼も笑う。


「あ、そうや。
あのときさあ、言葉、濁してたけどなんて言うたん?」


「え?」


「ほら、アタシが気分悪くて座り込んで…。
変なひとらに絡まれた時…」


「ああ、あれ…」


なんだろう、
どきどき、緊張する。


「……」


「……って言えるわけないやろっ!」


結局、教えてくれない。

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