こっちむいて伏見!


目の前の交差点の信号が赤になって、
歩いている人たちが立ち止まる。


少しして、
それまで止まっていた車が走り出す。




「あのさ…」


アタシは振り向いて彼に話しかける。



「え?」


「アタシ、今日楽しかった。
変なのに絡まれたことも、
伏見に追いかけられたことも」


「俺は、疲れた」


その彼の答えにアタシはくすくすと笑う。


変なのー。

疲れた、とか言いながらちゃんとこうして最後まで
付き合ってくれてるじゃないの。


アタシは再び、くるり、と前に向き直す。



「わっ!!」


疲れてるのはアタシの方か、
勢いつけて向き直ったせいかまたバランスを崩して
よろけてしまう。


< 219 / 378 >

この作品をシェア

pagetop