こっちむいて伏見!
目の前の交差点の信号が赤になって、
歩いている人たちが立ち止まる。
少しして、
それまで止まっていた車が走り出す。
「あのさ…」
アタシは振り向いて彼に話しかける。
「え?」
「アタシ、今日楽しかった。
変なのに絡まれたことも、
伏見に追いかけられたことも」
「俺は、疲れた」
その彼の答えにアタシはくすくすと笑う。
変なのー。
疲れた、とか言いながらちゃんとこうして最後まで
付き合ってくれてるじゃないの。
アタシは再び、くるり、と前に向き直す。
「わっ!!」
疲れてるのはアタシの方か、
勢いつけて向き直ったせいかまたバランスを崩して
よろけてしまう。