こっちむいて伏見!


「危ないっ!」


その声と同時にアタシはぐっと伏見に引き寄せられる。


アタシはその力の強さにそのまま、
彼にもたれるように倒れこむ。


目の前すぐに、
今日、彼が着ていたはずのチェックの青のシャツが。

それから自分ではない体温を感じる。


ってことは。

ちょ、待って。

これって抱き合ってるみたいになってるんじゃないの…。


ど、どうしよう。


「オマエ、大丈夫って言っときながら
ホンマはまだしんどいんちゃんか?」


「え?」


大丈夫、なんだけど。


それより大丈夫じゃないのは今のこの状態。


抱きとめられたその一瞬でアタシの中には
いろんな思いがぐるぐる、と。


こんなに蒸し暑い夜なのに。

彼の温かさは全く不快じゃない。



でもそんなこと思ってたって
またアタシは彼に突き放されてしまうんだろう。


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