こっちむいて伏見!
このときのアタシの中にはもう昨日の思いなど、
これっぽっちもなかった。
でもアタシがせっかく伏見のために作ってきたんだから!
絶対に一口でも食べてもらう!
「こっちむいてやっ!」
アタシがそう言って彼に手をのばしたとき、
彼は慌てて立ち上がり、
その場から逃げようとする。
アタシは部屋中を逃げる彼を追いかけてシャツの首根っこを捕らえる。
「わっ!」
「捕まえた!
ほら、食べてもらうから…」
なにこれ?
なにこの図式?
まるで虐待じゃないの?
いや、そんなのどうでもいい。
アタシは彼を自分のほうへ向かせて顔を近づけた。
そしてそのまま彼ににじり寄って壁に押し付ける。
その拍子に彼のメガネがずり落ちる。
アタシは人差し指でそのメガネを押し上げて直してあげる。