こっちむいて伏見!
アタシは彼がどんな表情をして部室を出て行ったのか、
見えなかったけれど、
あの態度、
声のトーンからなんとなく察しがついた。
「伏見、機嫌悪くなったのかなあ?」
ん?
先輩、ホント全然、わかってない。
アタシは苦笑しながら答える。
「だから、男である先輩に対する接し方と、
女のアタシへの態度って違うんですよ、
彼の場合…」
アタシはお茶を入れたマグカップを先輩の前にコトン、
と置く。
「ふーん、そうなんかなあ?」
「もう、全然、気にしてないですね?」
「うん」
にっこりと笑って先輩は答える。
そんな彼の笑顔に思わず、
アタシもため息混じりになるが笑って応える。
「まあ、気にせんでもええんちゃう?
アイツってホンマ無愛想って聞くから。
特に夢中になってしもたら俺相手でも必要最低限のことしかしゃべらへんこと、
あるしな?」
「…そう…なんですか」
なんだ、あいつ、夢中になったら先輩にまでそんな態度なわけ?
「基本的にはええ奴なんやけどなあ」
先輩はそう言ってニッコリ笑い、
お茶を飲んだ。