こっちむいて伏見!
アタシはこのとき、
初めて先輩の顔をはっきり見た。
それまで近眼で見えなくて。
なんとなくでしか確認できなくて。
目を凝らして見ようとしたら、
目つきが悪いなんて
言われそうな気もしたし。
伏見一筋で先輩の顔に興味ないって言ったら
ウソになるかもしれないけど。
正直、マユコがカッコいいって
言ってから
どれだけカッコイイのかって興味あったし…。
「ダメ…ですかね…?」
そう言いながら
アタシは先輩の顔を確かめるように見る。
先輩はアタシの質問に答えず、
困った顔をする。
「どうにかならへんかなあ」
耳元で聞こえる声に距離が近いことを理解する。
うーん、確かに。
マユコが言うとおり、背も高く、目鼻立ちも整ってカッコいいと思う。
これなら女子からモテるはずだ。
でも。
アタシはやっぱり伏見のほうがいいや。
だって、
実際、こんなに先輩と近距離にいても全然、
どきどきしないもの。