眠れぬ森
ミズキちゃんだって、きっと本音が言えてないだけで、ハルキの存在がどれほどありがたいと思っているか。

ハルキは自分の優しさ、情の深さに気付いていない。

それは、タクミのそれよりも、ひょっとしたら、ずっと深いものなのかもしれない。

ハルキはとても自然でピュアな人間。

よく見せようとか、そういう感覚で動くんじゃなくて、自分の本能にとても忠実な人。

だからこそ、不安定な中に、人を惹きつけるエネルギーを持ってるんだよ。


私は、ハルキの瞳を見つめながら、そんなことを思った。


「とにかく、ハルキはミズキちゃんときちんと向き合って話をするべきよ。」

ハルキは苦笑した。

「ミクも兄貴と真剣に向き合うべきじゃない?俺とこんな場所にいちゃまずいでしょ?」

そんな悲しいこと、言わないで。

言わせたのは私なのに。

苦しくて、涙が今にもあふれそうになる。

私という人間は、正直に生きてるように見せかけて、実は全く正直ではなかった。

だから、ハルキのような人に、自然と惹かれていったのかもしれない。
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