眠れぬ森
「そっか、癒やしね。いっときの、一時的なもの。永遠ではないんだ。」

思わず口からこぼれた。

そんなこと言って、ハルキにどうしてもらいていっていうの?

ハルキはだまって視線を落とす。

そして静かに言った。

「ミクはそう言うけど、永遠を俺が求めたら答えてくれるの?」

「それは、難しいわ。」

「だろ?」

そう。

私だってハルキに、一時的な癒やしを求めている。

永遠なんて、あり得ない。

今の私たちに。

「例え、一時的だったとしても、短い時間だったとしても、一緒に過ごすことを必要としている限り、それは永遠に繋がっていくはずだよ。在る意味、とても限定された永遠な関係なわけ。」

「わかりにくいわ。そうやって、大事なことから目をそらしてる。」

「ミクは、『愛』という言葉にこだわる?」

愛。

愛は、少なくとも癒やしよりも深い言葉。

私は、少し笑ってうなずいた。

「愛って大事だと思う。それがないと、どんな人間関係も成り立たないもの。」

「俺は、軽々しく愛って言葉を使いたくない。その一言で、色んな思いが省略されてしまうだろ?人の気持ちってそんなに簡単なもんじゃないんだ。」

「今日はえらく絡んでくるわね。」

「絡んでんのはどっちだよ。」

ハルキは笑った。

私も笑った。

「もう一度、俺を癒してくれる?」

ハルキはそう言いながら顔を近づけてきた。

「くだらない。」

そう言いながら、ハルキの唇を感じた。
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