眠れぬ森
ふいに携帯の着信バイブが鳴る。

見ると、ハルキからだった。

『俺、きちんとミズキと話し合ってみるよ。その方がお互いのためだと思うし。今日はありがとう。』

ありがとう・・・か。

何にありがとうだったんだろう。

ミズキちゃんときちんと向き合うよう説得したことかな。

一晩、付き合ったことかな。


誰かを苦しめ傷つけることをしていながら、そんなハルキのメールを眺めながら、どうしようもないほどの切なさがこみ上げてくる。

誰かを恋して恋して、どうしようもなくなった、あの時の感覚。

久しぶりの感覚。


ハルキとは、ほんの気まぐれだった。

少しの寂しさを紛らわせる、相手だった。

ハルキの体が恋しかった。


だけだったはずなのに。


キッチンに向かう。

冷蔵庫に冷えたビールが一本あった。

朝から・・・・だけど、思わずビールを開ける。

喉の奥に、痛いほどの炭酸が流れていく。

気付いたら、自分の頬に涙が流れていた。
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