眠れぬ森
タクミは慌てて、首を横にふった。

「俺、何も言ってないって。いや、ちょっとしぐさや表現が個性的だよって、みたいな感じで言ってただけで。」

ふぅん。

個性的ね。

聞きようによっちゃ褒め言葉だけど、悪くとれば「変わり者」ってこと。

ま、そういうこと言われるのも昔からだし、あまり気にしないけどね。

ハルキは無邪気な笑顔を向けた。

「っていうか、初めての挨拶なのに、すんごくけだるい感じで大人だなーって思って。」

よくわかんない。

でも、ハルキにはそれがツボだったようで。

「えっと、ハルキ、くんだっけ?」

「はい。」

「えらく若いけど、今何歳?」

「俺、こないだ大学卒業したばっかのぴちぴちの23歳です。」

その表現が妙におかしくて、私も吹き出した。

「ぴちぴちってねぇ。」

私はタクミと顔を見合わせて笑った。


それが、ハルキと初めて顔を合わせた瞬間だった。
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