眠れぬ森
13章 償い
ハルキがいってしまって、しばらく経ったある日。

ミズキちゃんがふいに私に連絡をしてきた。

「今から、お邪魔しても構いませんか?」

「うん、いいけど。」

本当は会いたくなかった。

きっとハルキの話題になってしまうのがわかっていたから。


タクミも私も、なぜだかあれからハルキの話をしなかった。

触れてはいけないって、お互いが感じ合っていたからかもしれない。

タクミがどうしてそうするのか、私にはなんとなくわかっていた。

きっと、タクミは、私とハルキの関係を、わずかながらに知っていたからだと思う。

それは血が繋がっているからこそ感じ取れる、野性的な勘で。


「すみません、急に。」

私は、ミズキちゃんの前にホットティーを置いた。

ミズキちゃんのお腹はもう随分大きくなっていた。

「あ、妊娠中は紅茶とか飲んだらダメだったっけ?」

そのお腹から視線をそらして聞いた。

「いえ、少しくらいなら大丈夫です。頂きます。」

ミズキちゃんは相変わらず、感じよく受け答えのできる女性だ。

好感を持ってしまうたびに、胸の奥がズキンと痛む。


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