眠れぬ森
「ミク!」

後ろから肩を軽くたたかれる。

振り返ると、ドニーが笑っていた。

「ハイ、ドニー。」

私も笑って右手を挙げる。

ドニーは、アメリカから語学留学している学生。

今二十三歳なんだって。

でも、日本人って若く見えるらしく、初めてドニーが私を見たとき、同じ年くらいかと思ったとか。

私より7歳も下なのにね。

席が隣になったのが縁で、親しくなった。

ドニーは、お父さんの仕事でしばらく日本に住んでたこともあって、日本語がとても上手なの。

ここで唯一日本語で話ができる、貴重な存在なのよ。


「ミクは、今日の宿題ちゃんとやってきた?」

「もちろんよ。あなたは?」

「半分しかできてない。」

「だめじゃない。授業まであまり時間がないわよ。」

「ミクのこと考えてたら、半分しかできなかった。」

日本でこんなこと言われたら、信用できない言葉も、ここでは素直に聞くことができた。

「急いで教室に行きましょう。半分、私の見せてあげる。」

私はドニーの腕をつかんで、学校へ急いだ。

ドニーはすばやく私の手を握ると、うれしそうに私の頬にキスをした。



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