眠れぬ森
とりあえずハルキには車で待っててもらって、慌てて着替える。

もともと薄化粧なんだけど、今日は慌ててるから、更に薄化粧もいいとこ。

少しだけいつもより色の濃い口紅をさした。


「ごめんね、お待たせ。」

運転席で携帯をいじっていたハルキが私の方を見た。

一瞬、目を見開いて、そして笑った。

「ミクさん、きれいだね。」

あまりにも露骨に言われたので、恥ずかしくなる。

らしくもなく、顔が熱くなった。

「年上女性をおちょくんないの。」

すぐに目をそらして、ハルキの横に座った。

「別におちょくってなんかないけど。」

ハルキは、笑みをたたえたまま、車を発進させた。


秋の日差しが、時折車の窓から差し込んでくる。

そのたびにまぶしくて目をつむった。

でも、この秋の日差しは結構好き。

なんだか夢を見ているような錯覚に陥るような、黄色っぽい光線。

世界がセピア色に感じる瞬間がある。

そういうのって、幻想的でなんともいえず心地がよかった。

そういう話は、誰にもしたことないけど。
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