眠れぬ森
「ここ、だよね?」

ハルキが式場の前のパーキングを指さして言った。

「そう、ここ。ありがと、やっぱ車だと早いわ。」

道が混んでなかったのも幸いして、家から15分ほどで着いてしまった。

パーキングに車を停めると、急ぎ足で衣装の部屋に向かう。

ハルキはキョロキョロしながら、興味深そうに、そして落ち着きなく見回していた。

「お待ちしておりました。本日は急なお呼び立てで申し訳ございません。」

チーフマネージャーが私達に深々と頭を下げた。

既に用意されていたドレス3着。

純白のウエディングドレス、なかなか決まらなくて2着仮押さえしてたんだ。

それプラス、衣装担当の方が気を利かせて、一番新しいデザインのドレスも試着させてもらえるとのことだった。

まずは、仮押さえしてたドレス2着をもう一度着てみる。

着替え室で、手伝ってもらいながら試着。

そして、外に出て、大きな鏡の前に立ってくるくる回った。

鏡の向こうにいたハルキと目が合う。

少しぼーっとした表情で、私の姿をじっと見ていた。

「何?見とれてるの?」

いたずらっぽく聞いてやった。

ハルキは意外にも顔を赤くしてうつむいた。

隣にいたアシスタントの女性がくすっと笑う。

「チャーミングな旦那様ですね。」

「へ?」

旦那様って・・・。

私の相手と間違われてるし。
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