眠れぬ森
「俺、今着てるのが好きかな。ミクさんの顔色がすごくきれいだ。」

そう?

もう一度、鏡にうつる自分を眺めた。

確かに、新作の艶が顔に反射して、明るく見えるかも。

アシスタントの女性は大きくうなずいた。

「わたくしも、弟さんの意見に賛成です。この新作はお勧めなんですが、それ以上にとてもミクさんにお似合いですよ。」

そっか。

誰もまだ袖の通してないドレスを着れるっていうだけでも、借りる価値はあるのかもしれない。


「じゃ、これでお願いします。」

「はい、かしこまりました。」

アシスタントの女性は笑顔で答えた。


意外と早く決まってよかった。

これもハルキのお陰かな。


帰りの車の中。

このまま帰るのは、なんだか申し訳ないような気がした。

「ハルキくん、この後何か予定ある?」

「いえ、別に。」

「じゃ、よかったら晩御飯一緒にどう?」

「え?構わないんですか?」

「今日はハルキくんがいてくれて随分助かったから、お礼したくて。」

「お礼なんて、構わないですよ。でも、食事は一緒にしたいかも。」

その返答がどういう意味を含んでいたのかなんて、その時は全く気付かなかった。
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