眠れぬ森
静かに部屋に入る。

電気をつけようとする私の腕はつかまれた。

心臓がいつもの倍くらいの速さで鼓動しているのがわかる。

こんなに緊張したのは何年ぶりだろう。

ハルキはもう一度私にキスをした。

今度は唇に。

このまま、ハルキに飲み込まれそうな自分。

でも、どこか冷静な自分が私の行動にセーブをかけていた。


「電気つけるから。」

私はハルキの体から素早く離れると電気をつけた。

現れるハルキの顔。

急に現実に引き戻される。


ハルキはタクミの弟。

そんなことできっこない。

いくら、タクミとの信頼関係ができていたとしても、その一線を越えたら一瞬にして壊れてしまうことくらいわかっていた。

もちろんハルキも。
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