眠れぬ森
少しの小銭が入った財布をバッグに入れて、サンダルを履いた。

静かに玄関の扉を閉める。

こんな時間、きっとご近所さんは寝てるよね。

そっと鍵をかけて、エレベーターに乗った。

7階から1階までのわずかな時間。

日常の自分から、女としての自分にスイッチを切り替える。


1階。


なるべく音を立てないように、ロビーから外に出た。


さっき、窓から入ってきた同じ風。

目をつむって、深く吸い込んだ。


目を開けると、その人の車が停まっている。

助手席の窓が開いて、その人は運転席から軽く手を振った。
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