眠れぬ森
トーストを食べ終えた後、気分転換に街に出ることにした。

秋の日差しがまぶしい午後。

少し爽やかな風を頬に受けながら歩くのが気持ちいい。

道行く人の表情もなんとなく和らいでいる。


「ミク?」

突然、右の方から声がした。

声の方を見ると、学生時代からの友達のカンナが手を振って近づいてきた。

「あ、カンナ、久しぶり。」

私も手を振って笑った。

こんな性格だから、女友達も少ないんだけど、その中でもかなり心を許して付き合ってきた友人の一人だった。

「そうそう、このたびはご結婚おめでとうございます。」

カンナは茶目っ気たっぷりの笑顔で深々と礼をした。

「あはは、まだ結婚してないからわかんないわよ。」

笑いながら返す自分の言葉に、一瞬笑えない現実に引き戻された。

「なに、それ?意味深な発言だなー。マリッジブルーってやつ?」

決してそれはなかった、はず。

「私みたいな性格が、マリッジブルーなんかになると思う?」

少し笑った。

「ま、そうね。そういうの関係ないもんね、ミクってタイプは。」

「あはは、言ってくれるじゃない。」

「どちらかといえば、相手がいるいない関係なく、好きになったら一直線ってタイプだもん。余計怖いかも。」

カンナの一言が私の胸の奥にズンと突き刺さった。


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