眠れぬ森
助手席の扉を開けて、すばやく体を滑り込ませる。

「どこいく?」

その人は、前方を見ながら少し笑った。

「森。」

私は答える。

「森?」

その人は、一瞬笑うのを止めて、私の方を見た。

「そう、森。」

「海じゃなくて森?」

「今日は、さざ波の音を聞くよりも、深い森の中で虫の音を聞きたい気分なの。」

「わかった。」

その人は、ゆっくりとハンドルを握るとエンジンをかけた。


車が動き出す。


「相変わらずだね。」

「何が?」

「ミクって、面白い。」

「そう?」

「飽きないよ。やっぱ。」

私は何も答えず、座席にもたれた。
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