眠れぬ森
ハルキは、服を着ると、

「もうお腹いっぱい。」

って笑いながら、帰っていった。

「変なの。」

私はそんなハルキを苦笑しなら見送った。


今度はいつ会えるんだろう。

タクミからの電話を待ちながら、頭の中はハルキのことでいっぱいだった。


「もしもし、ミク?」

タクミは21時すぎに電話をくれた。

いつも通りの優しい声。

「片づけないといけない仕事が長引いちゃって、電話かけるの遅くなってごめん。」

そんなこと、一々気にしなくてもいいのに。

タクミの気遣いは女性並だ。

ハルキの香りが残るソファーの上で、私はタクミの声を聞いていた。

電話だから、さほど悪びれることもなく。


「さっき、ハルキから聞いたんだけど、」

突然、タクミの口から『ハルキ』の名前が飛び出した。

「偶然外で会ったんだって?」

ハルキも、一々報告しなくてもいいことをタクミに言ってくれる。
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