眠れぬ森
たわいもない話を繰り返しながら、気が付いたら22時を回っていた。

タクミは男の癖に長電話になることが多い。

ま、これも海外出張が多いせいだけど。

「今回日本にはどれくらいいられるの?」

「1週間かな。とりあえず、結婚式や新居の準備があるから、それを最優先に考えてるよ。明日は披露宴会場へ打ち合わせだったよな。」

「うんそう。」

「10時に車で迎えに行くよ。」

「わかった。」

「ミク?」

「うん?」

「何か困ったこととかない?」

一瞬息を呑む。

「別に。どうして?」

「うーん、なんだかさ。昨日会った時から、ミクの雰囲気が変ったような気がして。俺も出張多いから、結婚前で色々と不安になってんじゃないかって気になって。」

そういうことか。

少しホッとする。

「大丈夫よ。そんなことで不安になるような人間じゃないことくらい、タクミはよく知ってるじゃない。気にしないでお仕事に集中してよね。」

私は軽く笑った。

「そっか、ならいいんだ。でも、もし少しでも不安になるようなことがあったら、その時は遠慮なく言うんだぞ。俺が海外に出てる時は、ハルキも使っていいから。」

ハルキを使う・・・

タクミらしくない表現。
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