眠れぬ森
「あれ?ミクは俺のこと愛してなかった?」

「愛なんて、軽々しく使う言葉じゃないと思うけど。」

「別に軽々しい意味で使ってないんだけど。」

「でも、ハルキにはミズキちゃんがいて、ミズキちゃんのお腹には赤ちゃんができてたわけでしょ。」

「そうだよ。」

「わかってて、私を抱いたわけでしょ?」

「うん。」

「そして、ミズキちゃんとは別れる気はなかったんでしょ?」

「何が言いたいの?」

「そういうことが言いたいの。」

「おもしろいね、ミクは。」

その一言に、頭のてっぺんに血が上って噴き出しそうになる。

「あんた、いい加減にしなさいよ。おちょくんなっての!」

声が大きくなった。

もう一度深呼吸して、気持ちを落ち着ける。

「じゃ、言わしてもらうけど、ミクだって兄貴と別れる気はなかったのに俺に抱かれたんでしょ。それはどう説明するの?」

ハルキの反撃に、口をつぐむ。

「ミクは俺に抱かれた時、愛はなかった?俺はあったよ。今だってずっとミクのこと愛してる。」

体の中心がだんだんと熱くなってくる。

だめだ。

こうやって、いつもハルキの口車にのせられて、間違った方向へばかり行ってるんだから。
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