眠れぬ森
「彼女と子どもまで作っておいて、よく言うわよ。」

自分でも驚くくらい、ひどい言葉を吐いていた。

「・・・嫉妬?」

電話の向こうで冷静な声が聞こえてくる。

ますます私の気持ちがパニックを起す。

嫉妬??

「俺だって毎日兄貴に嫉妬してるよ。今だって。すぐにでもミクに会いたくて、押さえるの必死なんだ。そういう気持ちだけじゃダメ?」

片手で胸を押さえる。

自分の気持ちが飛び出しそうになるのを必死で止める。

「もっとミズキちゃんやお腹の赤ちゃんのこと、思ってあげなよ。今はそっちが一番大切でしょ?」

「そんなことはない。」

「そんなことはないって・・・、そんな冷血漢男だとは私もがっかりだわ。あなたの子どもを宿してるのよ、ミズキちゃんは。」

「今から会えない?」

こんな話をしているときに、よくもそんな事が言えるもんだわ。

ハルキって、本当に人間として何かが欠落してるんじゃないかしら?

ハルキに失望する気持ちの向こうで、今すぐ会いたいと思う自分にイライラする。

「俺、きちんとミクには話しておきたくて。今兄貴はいないだろ?これから車で迎えに行っていい?」

「・・・。」

「何も言わないってことは、了解だって思うよ。じゃ、30分後くらいにそっちへ行くから。」

そして、そのまま電話が切れた。


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