眠れぬ森
ハルキはすばやく運転席に乗り、車のエンジンをかけた。

「ミク、どこか行きたいところはある?」

「別に。二人でゆっくり話せる場所ならどこでも。」

「そっか。じゃ、ホテルにでも行く?」

少し間をあけて答える。

「そこだけは嫌。」

ハルキは軽く笑った。

「そう言うと思った。」

「だったら言わなきゃいいじゃない。」

「一応聞いてみないとね。」

ハルキはアクセルをゆっくりと踏んだ。

「海の音でも聞きにいく?今日は天気もいいから夜空もきれいに見えると思うし。」

「かっこつけだね、ハルキって。」

私は小さく笑った。

「俺はかっこつけだよ。今頃気付いた?」

「かっこつけはかっこいい人がやるもんだわ。」

「俺ってかっこよくない?」

「全然。」

ハルキは目を細めた。

とりあえず運転中だから、前を向いてるけど、フロントガラスを見ながらも私に気持ちを向けてくれているのがわかった。
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