眠れぬ森
「ミズキちゃんはその後元気?」

「ああ。」

「お腹の赤ちゃんも?」

「うん、順調みたい。」

「大事にしたげなよ。家族なんだから。」

「・・・。」

ハルキは前髪をかき上げて、自嘲気味に笑った。

「ミクはもう俺の話聞く気失せてる?」

そういえば、そんなこと言ってたっけ。

「別に。聞くわよ。」

「俺、ミクに嫌われちゃったかな。」

ハルキは少し潤んだ瞳で私の目をのぞき込んだ。

思わず視線を外す。

「最初に戻っただけよ。」

「出会う前ってこと?」

「そう。私たちには何もなかった。」

「そういうことにしたいんだ。」

「子どもじゃないんだから、そういうところまで一々質問しないで。」

私はイラッとして、腕を組んだ。

「キスしていい?」

ハルキは静かな声で私の肩を引き寄せた。


なんて強引な・・・。

強引な男は嫌いなはずだった。

子どもみたいな男も、眼中に入ったこともなかったのに。

どうして、ハルキは特別を感じてしまうんだろう。

ハルキを軽蔑したはずなのに、私はいとも簡単にハルキとキスをした。
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