眠れぬ森
タクミはハルキよりもずっとお酒が強い。

そして、お酒のこともよく知ってる。

ただ、私と違うのは、お酒を飲む場所の雰囲気をとても重視するということ。

前、ハルキを連れていったような高架下の居酒屋なんて、絶対好きじゃないはず。

どんなにおいしいお料理やお酒があったとしても。

それを知ってるから、私はタクミをあの居酒屋には一度連れていったっきり行ったことがなかった。

これも、きっと海外生活が長いせい。

目も舌も、随分ヨーロッパで肥えてるような気がする。


タクミの選ぶお店は本当においしかったし、素敵だった。

私の行きつけの居酒屋とはほど遠いおしゃれなお店ばかりだったけど、私も嫌いじゃなかった。

いつも、タクミが「新しいお店だよ」って言うたびに、ワクワクした。

どこでこんなお店を見つけてくるのか不思議なほどはずれがなかった。


友達皆からうらやましがられる。

「なかなか男の人でここまでのお店を探して連れていけないよー」って。

確かに。

今まで付き合ってきた男性で、これほどまでにピントの合ったお店を選び出す能力をもった奴はいなかったもの。

ハルキは、どうだかわからないけど。



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