眠れぬ森
「そうだよ。俺はイタリアンやフレンチばっか食べてると思った?」

「うん、思った。」

タクミはおかしそうに笑った。

「んなわけないだろうが。ミクと付き合ってた時は、かなり気張ってたんだ。格好いいところ見せないとなって。」

「そうだったの!そんな気張らなくたってよかったのに。」

タクミは、いつもとびきりの演出をして、私を招待してくれていたんだ。

本当は、庶民的な居酒屋とかジャンクフードが食べれるお店が好きだったのに。

なんだか、そういうタクミにホッとする自分がいた。


最近できたラーメン屋。

出来た途端評判で、いつも長い列を作っていた。

今日はまだましな方。

10分ほど待って、席に案内される。

もちろんカウンター。

タクミはラーメンを食べる前に、生ビールをぐいっと飲み干す。

こんなタクミも見たことなかったり。

「時差ボケあるのに、そんな一気飲みして大丈夫?」

こっちが心配になる。

「大丈夫だって。はぁ!おいしい。やっぱ日本のビールに限るよ。」

そして、二人で熱々のラーメンをすすった。

ニンニクがたっぷり入った、少し辛めのラーメン。

タクミは本当においしそうにがっついていた。
< 93 / 152 >

この作品をシェア

pagetop