眠れぬ森
帰宅するやいなや、タクミは私を抱き締めた。

驚くほどに強い力で。

こんなことも、今までにない展開。

一体、タクミはどうしたっていうの?

「ど、どうしたの?」

「ずっとこうしたかったんだ。」

「そう。」

「ミクは俺と結婚して幸せ?」

急にそんなこと聞かれて、一瞬戸惑う。

ハルキとそういう関係を続けていて、幸せっていえるんだろうか。

タクミはくすっと笑った。

「ミクは正直すぎて嫌になるよ。じゃ、聞き方変える。俺と結婚してよかった?」

微妙なニュアンスの違い。

タクミの頭のよさだと、私は思う。

「うん、よかった。」

「そっか。本当に?」

「どうしてそんなこと聞くの?」

「ん、なんていうかさ。結婚してからもあまり一緒に過ごす時間がなくて。俺の中では、結婚前以上にミクと距離が離れてしまったような錯覚に陥っちゃって。不安なんだ。ミクがどっかいっちゃいそうでさ。」

タクミは生ビールを2杯も空けたせいか、少し目が潤んでいた。

不安、なんだ。

「このまま、抱いていい?」

体が硬直する。

私はタクミをきちんと、今までみたいに受け入れられるんだろうか。

ハルキに何度も愛された体で。
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