眠れる森
「兄さん。…………残るのは兄さんの方だよ」
「なにを言うっ!?」
予想もしない展開に驚く
「俺の影武者を、勝手に引き受けたでしょ?俺は何も聞いてないよ」
シルクにしては強め口調
「…俺に影武者なんかいらない。
だから、兄さんはヴェルトに残って………もちろん兵に紛れるのもダメだからね。そしたら国は兄さんに預けて、俺はレオを引きつれて行けるんだけどな」
薄い笑みを浮かべる
「・・・・・・シルク、もう一度言う。お前はここに残るんだ」……────
「──…ク。シルク!」
何度か目の呼び掛けで、ようやくシルクが気付く
「ごめん。すこし頭が旅行してた」
「……お土産のない旅行なんかしても、待ってる私は楽しくないですよ。」
皮肉めいたレオに、少しばかりの苦笑いで返す
「王子との面会では、今回のことについて何か話しましたか?」
一瞬言おうか迷った。
だが、シルクは静かに首を横に振った
「なにも。」
「そうですか…」
「今回の戦争、悪いけどお前にはヴェルトの守備に回ってもらう」
「分かりました。ヴェルトが薄手になっても困りますしね」
「兵は3分の1を俺が連れていく。」
「3分の2にしてください。それでは少なすぎます」
「いや、残りはヴェルトに残して行く。恐らく、奴らの狙いはヴェルトだよ」