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第1章/ 蛙時計 ポメラニアン ドーナッツ

目覚まし時計の嫌な音で目を覚ましたのは、朝の4時だった。

なぜそんな時間に起きなければならないのかは分からないが、おそらく妻の"めざまし音"のせいだろう。

その目覚まし時計の事を妻は、「グロ」と呼ぶ。
"めざまし時計"に名前をつける人になんて、初めて出会った。妻は、少し不思議な人なのだ。

たとえば、妻はポテトチップスや映画館でキャラメルポップコーン(妻は何故か、普通のポップコーンを食べる人を嫌う)などスナック菓子を食べるとき、決まって割り箸でつまんで食べる。映画館にまで割り箸を手持ちバッグに2~3本所持する。妻に一度だけ、
「どうして、割り箸なんか使うんだい?」と聞いてみたことがある。
「手が汚れたら洗えばいいじゃないか」
「違うのよ、ただ割り箸で食べると美味しく感じるのよ」
理解できるだろうか?

目覚まし時計を名前で呼ぶと言っても、何処にいったのかわからなくなった時や予備電池を買ってくるのを頼まれたときに、"グロ"は?とか"グロ"の電池を~など、そういった時に呼ぶくらいの程度だった。

その時計は以前、珍しい雑貨を集めている店の知り合いだった店主から、よくわからないが珍しいらしい外人の、古いレコードを何枚か譲ったときに、お礼にと貰ったものだ。なぜか、かえるのかたちの時計だ。

しかしその時計の目覚まし音は少しばかり不気味だった。見た目もだ。それはあまりに蛙らしくなくあまりに蛙すぎる形だった。まず、目覚まし音は蛙の鳴き声なのだが、それが「ケロケロ」なら普通だろうけど(何が普通なのかは分からないが)、それは「グログロ」と鳴くのだ。何故かは分からないが(故障してるのか元々そうなのかはわからない)とにかく、「グログロ」なのだ。
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