カリフォルニア・ガールズなら

「山田です。宜しくお願いします。」
「ああ・・よろしくお願いしますです。いやぁ~カツラの世界へよ・・」
「あの、一つ質問してもいいですか?」
「ええ、もちろんです。」
「広告チラシにはカツラなんて書いていませんでした。間違えたのかもしれません。」
「もちろんです。そんなこと書いたら誰も来やしませんです。そう思いません?」
「そう思います。」
僕は来るところを間違えていたみたいだった。
僕は帰ろうと思い席を立とうとしたとこで、カツラ博士はこう言った。
「もちろん帰ってもかまいませんです。しかし、あなたにはやって欲しいことがあるです。もちろんあなたにしかできませんです。」
「でも、他の人が広告チラシを見て僕みたいに"騙されて"来ますよ。」
「うふぉうふぉ。」
彼はなんとも奇妙で不気味な笑い方だった。
人にはいろんな種類の笑い方があるものだ。
「失礼失礼。実を言うとですね、あなたにしかあの広告チラシを配っておらんですよ。うふぉうふぉ。」
「でもどうして僕なんですか。」
「それはまたの機会に話すとしましょう。今日は帰って、じっくり検討してみてくださいです。」
「わかりました。」
「うむ。ではまた。」
僕が席を立ち部屋を出てエレベーターの前まで行くと、あのボタンが一つもないエレベーターのドアが閉まったままだった。
「このエレベーターは変わっていますね。」
「うふぉうふぉ。そんなことはないです。一般の方は確かにそう言いますがね。ただの防犯対策ですよ。盗人が多いものでして。」
そう言うと、奇妙な笑いをやめ、ドアを開けてくれた。
エレベーターが開くと、あのピンクの女がドーナツを抱えて乗っていた。
「あら、もう帰るの?せっかくあなたのドーナツも買ってきたのに。」
「ええ、ありがろう。」
笑顔でそう答えると、ピンクの女は少し顔を赤くした。
「その方を出口まで見送ってきなさい。」博士がそう言った。
「そうね。」
「どうもありがとう。」
僕はお礼を言った。
僕がエレベータに乗り、博士にお辞儀をすると博士はこう言った。
「あなたにしかできんです。」
博士の顔からは笑みが消えていた。
そしてドアは閉まり、シンプルで完璧なまでに何一つないエレベーターの中で、ピンクの女と僕は2人っきりになった。

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