カリフォルニア・ガールズなら

「いないのよ!ソラがいないの!あなた知ってる!!?」
妻はそう怒鳴って家に帰ってきた。10時30分だった。
僕はその時ちょうど、モーニングコーヒーを注ぎ入れている最中であまりに、勢いがよかったせいでコーヒーをこぼしそうになった。

妻は僕に向かって、
「ねぇ、あなた!!聞いてるの!?いないっていってるでしょ!!」
あるいは妻は僕ではなく、モーニングコーヒーに向かって怒鳴っていたのかもしれない。

「なんでだと思う?」妻がそういった。
「なんでって?」
「ソラよ…。」
「ぁぁ…、もう考えるのはよそう。ソラだってまた腹をすかせて帰ってくるさ。」コーヒーをすすりながらそう言った。
「でも…そんなこ…」
「今考えたって仕方ないだろ。信じて待つしかないよ。ね?」
「でも……」
妻のあんな悲しそうな顔は初めて見た。
そして、あの事を思い出した。

「あ…。そう言えば。」
「なによ…。」妻は憂鬱そうに、コーヒーを眺めていた。
「さっき電話がかかってきたんだ。若い女性だったょ、知り合い?」
「わからないわ、なんて言ってたの?」
「うちの犬の事を言ってたんだ。妻がいないからって言ったらかけ直すって言ってたぜ?」
「見つけてくれたのかしら??」
「まさか。」そんなわけはない。見つけたとしても、うちの犬だと分かるわけはない、何故なら首輪に電話番号も名前もなんにも書いてないし、(そんなの書く人はいないか…)家に電話がかかってくるはずがないのだ。
しかし、妻を悲しませないため、
「でも、犬のことで電話がかかってきたんだし、希望はまだあるね。」と元気づけた。

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