君がいた風景
しばらく歩くと、昨日と同じ風景が春人の瞳に映し出された。


白い肌に白いワンピース。薄茶色のさらさらの髪が穏やかな風に吹かれている。


今日も彼女はスケッチブックに何かを描いていた。


「あの…こんにちは」

春人は勇気を振り絞って声をかけた。


彼女は黙って春人の方を向くと、軽く会釈をしてまた何か描き始めた。


「い、いい天気ですね!川…描いてるんですか?」

「……」

「あのっ、俺っ写真が好きでっ…!絵とかも興味があってっ…!」

「……」

「あ…えっと…」

反応のない彼女にどうしたらいいか分からず、春人は言葉を失った。


そんな春人に気づいて彼女は無言で春人を見つめた。



「っっ!あっ、えっと…じゃっまた来ます!」

春人は勢いよく走り去った。



彼女にじっと見つめられた瞬間、春人の心臓は爆発しそうだった。



「はぁはぁ…」

「春くんどうした〜?」

気がつくと子供たちのところまで戻ってきていて、拓磨の友達のマナちゃんが頭をなでていた。


「お、おう…心臓撃たれそうになった」

「え?!春くんってもしかして、オオカミなの?あたし、昨日あかずきんちゃん読んだんだ!」

「マナ〜!男はオオカミなんだぞ!」

「拓磨…おまえ…」

「だってお客さんたちがカラオケで歌ってたよ!男はオオカミなのよ〜♪って!」

「ああ、カラオケね」

「オレも早くオオカミになりたい!オオカミってかっこいいよな!なっ春人!」

「オオカミになったらマナちゃんに嫌われるぞ」

春人が拓磨の耳元でそっと言うと、拓磨の顔は真っ赤になった。

「春人のウンコ!!」

やっぱり子供はむちゃくちゃでかわいい。




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