君がいた風景
川のあたりに着くと、遠くに拓磨が一人でいるのが見えた。


「たっ!……」


春人は拓磨の名前を呼ぼうとした。

しかし、拓磨のいるその風景に言葉を失った。


ゆっくりと風が吹き、優しい光の中に一人の少年…。

その少年、拓磨は川の方に向けて、人差し指と親指で枠を作っている。


指をカメラに見立てているのだ。


春人も小さい頃に、撮りたい風景があると、そうやって写真を想像して風景を見ていた。


そんな拓磨を見て懐かしい気持ちになったと共に、その風景が新鮮で美しいとまで思った。


春人は、無意識にシャッターを押していた。

「…春人?」

シャッターの音に気づいた拓磨が振り向いた。

「おう、たそがれ拓磨くん。写真ができたぞーていうか、何見てたんだ?」

「あ…、いや…。写真できたの?見せて見せて!!」

「おう、ホラ。」

封筒から一枚取り出して、拓磨に渡した。


「わぁ〜!ばあちゃんキレイに写ってる!」

「だろ?」

拓磨が写真に見とれている隙に、拓磨が見ていた方を見てみた。

「…なるほどな」

「んぁ?何が?」

「いや、拓磨…もう一枚いい写真あるぜ」

「見せて見せて!!」


< 21 / 65 >

この作品をシェア

pagetop