君がいた風景
春人は曇りの日に写真を撮るのも好きだった。


晴れた日には撮れない、どこか切ないような風景に心をくすぐられる。


今日もまた、春人の足はあの川へと向かっていた。


向かい始めた頃には大粒の雨が地面を叩きつけていた。


「この天気じゃ…さすがにいないか…」


諦め半分であの場所へ向かうと、そこには絵を描く真奈美が座っていた。


「あ…」


春人は一瞬出しかけた声を飲み込んだ。


真奈美の表情、絵を描く手…

いつもとは違う姿に春人は戸惑ってしまった。


どこか荒々しい、今にも爆発してしまいそうな険しい表情。


春人はその姿を見て、決して雨のせいではない…そんな気がしていた。


「傘…持ちましょうか…」


傘を肩に挟んで描きにくそうな真奈美を見て、春人は思いきって声をかけた。


「………」


真奈美はちらっと春人を見ただけで、荒々しい手を止めなかった。

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