君がいた風景
最後の日の朝、春人は女将たちに見送られて帰ろうとしていた。


「女将さん…、いろいろとお世話になりました。ここでのことは、一生忘れません。」


「また遊びに来て下さいね…拓磨も喜びますから」


女将の目にはかすかに涙が浮かんでいる。


「そう…ですね…、そういえば拓磨は?」


「部屋で…、すねてるのかしら…」


「拓磨…。わかりました、それじゃぁ…行きますね」

「お元気で。」


春人は肩を落として行こうとすると…後ろから足音が聞こえた。


「春人!!」


「拓磨、来てくれたんだな…」


「当たり前だ!親友だろ!」


二人はお互いに笑い合った。


「春人…これ…」


拓磨は小さい袋を春人に手渡した。


「なんだ?これ?」


「後で開けて見てよ」


「ああ…わかった。俺もお前に渡したいものがあるんだ…これ…」


春人は拓磨に1枚の写真を渡した。


それは海で撮った白い貝殻の写真だった。


「その貝殻って、大事な人にプレゼントするんだろ?だから…俺から、お前に。」


「春人…ありがとう!!」


拓磨は必死に涙をこらえた。


「じゃぁ、また…必ず会おうな!」


二人はかたく握手をして別れた。
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