君がいた風景
哲也をタクシーに乗せると、春人と陽子は二人きりになった。


「青山さん、もう帰っちゃうんですか?」


「えっ?まぁ…」


「違うお店で…もうちょっと飲みません?」


陽子は両手を合わせてお願いするようにして言った。


「ああ…、いいよ」


「良かった!」


陽子は笑顔で軽く跳びはねて近くの居酒屋へ入った。


さっきのバーとは正反対の雰囲気で、賑やかな感じの店だった。


「私の青山さんのイメージはこっちの感じ!」


「え?」


「ああいう静かなバーもステキだけど、青山さんはもっと明るく楽しく飲むイメージ」


春人は陽子の前ではほとんど話してないし、無口な印象を受けていると思っていた。


この瞬間から陽子に対して不思議な感覚を覚えた。


「青山さん…今日は無口な感じだけど…、ホントはもっと楽しい人なんじゃないかっていう…私の勘!へへ」


「そっか…ごめんな、なんか今日はいろいろ思い出しちまってさ…」


「いろいろって…どんな?」


陽子は急に真剣な顔で聞いてきた。
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